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黄金郷

エルドラド――黄金郷。

自分のなかに、それがあるか。
誰だってほんとはもってるはずなんだけどさ。
漠然とでも、それはある。
ないほうが、おかしい。
そんなもんねーよとゆーなら、あんたどーやって生きてきたのさとゆー話になるよな。

大事な友達が、よく言う。

 「そこに生きてるだけで、大変なことなんだから」

そうだね。
彼はずっと、命をみつめてきたから。
いつも死ととなりあわせで。
命の期限を切られ続け、またそれを救われ続け――生まれたときからこんなことしてれば、たしかに生きてるってことがどんなにすごいことか実感するよ。
彼にはしっかりした理想郷があって、それは到底手が届かないものだとわかってはいても、いつか必ず探し出して自分のものにすると思ってる。
いつか、そこに辿りつくのだと。
目標が、決まってる。
理想だから理想で終わらせない――彼は、そういうひと。

  現実は夢になる。だから――夢も現実になるはずだ。

彼が言ったこの言葉が、ものすごく好きだ。
こんなことも言う。

  自分で自分がわかるわけないだろ。
  わかんねーから、やれるんじゃん。
  自分の可能性なんざ、自分じゃ絶対わからない。
  だから思うんだよ、「もっといける」って。
  こんなもんじゃない、まだまだやれる――ってな。
  だからな、無茶だの無謀だの言うなよ。
  俺のちからはこんなもんじゃねーはずだから(笑)

納得するしかない。
限界なんざ、ないのと一緒だしな、人間なんて。
物質としてのからだが破壊されない限り、なんだってやれるはず。
こういうことを言ってくれるひとがいるから、たぶん私は前を向いてることができるんだろな。
迷っても困っても止まっても、うしろから「まだやれるだろ、いけ」って言ってくれる。
「なんかあったときは俺たちがついてる。安心してやってこい」。
だから、やれてる。

エルドラドは、はるか彼方。
でも、遠いからってあきらめない。
いつか必ずたどり着く、逃げ出さないかぎりは。

黄金郷。
理想郷。
誰でも必ずもっている、あこがれ。
それがなにかわかっていれば、迷わず生きていけるはず。

あすなろうあすなろう、明日はきっと、あの木のように。
迷わず、まっすぐに――。

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